能率よく仕事をするというと、職工のような人の問題かと思っていましたが、アメリカを訪問し、ワナメーカーがしてくれた接待に接し、感心しました。
既にテーラーという人がこういう手数を省くことに論をなしています。
ピッツバーグの汽車が5時40分にフィラデルフィアに着きます。着いたならば、自動車を出迎えに出すのでホテルに寄らず、すぐ来てくれ、というのでその通りにすると、6時2分か3分に着きました。先生は待っていて、直ちに私を案内して、まず店の有様を一通り見せました。まことに目を驚かすような大きな店で、しかも、その日に来た多数の客がまだ、帰らずに待っていたから、何か大きな劇場の「ハネ」に立ち会ったかのように群集をなしていました。
そして、次々と店内を案内されました。これが1時間ほど。
7時頃「ホテル」に帰る頃、明日は8時45分にお前を訪ねる。それなら朝飯は済むだろう…。済みます・・ちょうど翌朝8時45分にきちんと着て、昼頃まで色々と話をし、昼飯になるから私は帰る。2時ころ迎えにくるから、支度をして待っていてくれ、と。それから2時にきちんと来て、今度は日曜学校を案内される。牧師が聖書を講演しそれから讃美歌、ワナメーカーが私を紹介的な演説をし、それから私に日曜学校で感じたことを言えというので、私も演説をしました。・・それが終わるとすぐ隣の聖書研究室,さらに2-3丁隔たったところの労働階級の人たちの聖書研究会・・彼は東洋からこういう老人が来たからぜひ握手をしたがよかろうと言ったので、400人ものいた残らずに強く握られるので、手が痛くなるほどでした。
やがて5時半ごろになり、6時に立って田舎に行かねばならぬ用事があるので、是非もう一度会いたいが、何とか途はなかろうかという話になりました。ニューヨークにいつ行く?30日に行って来月4日まで滞在しています。しからば、私は2日にニューヨークに行く用事がある、その時もう一度会おう、と約束しました。
2時から3時の間にあなたの店に行こうと約束し、2時半に会って、実はごちそうできない代わり、本を送ると、リンカーン大統領は言いました。グラント将軍の伝記を説明し、渡してくれて実は自分はグラント将軍歓迎委員長だったなどということを語り合って別れました。
実にその切り盛りに無駄がなく、話もまた適切でした。
私は大いに感服しました。時間を無駄にせず、ことかくのごとくならば能率がいかに増進することでしょう。別に物を作るわけでなくとも、お互い人間を使うことを無駄にせず、自分自身も大いに気を付けたいと思います。
ワナメーカーという人はグラント将軍の歓迎委員長というので、大きなレストランチェーンを経営しているフイラデルフイアを代表する経済人であったのでしょう。
このころから、アメリカではタイムマネジメントが熱心に行われ、渋沢は大いに感心しています。テイラーとは、フレデリックテイラーの科学的管理法のことで、流れ作業で有名で、現在では、人間の仕事を単純作業にしたと批判されることも多いが、当時は画期的なもだと非常に歓迎され、アメリカ全体が純粋で未来に向けて希望に溢れていた様子が伝わってきます。


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