スティーブ・ジョブズと禅

スティーブ・ジョブズが、世界的な存在になったのは、
1977年のウエストコーストコンピュータフェアでのアップル2の発表でした。
彼のプレゼンのときに、主催者ジム・ウォーレンは、
彼の姿が見当たらないのに慌てていました。
当時の彼は、普段はヒッピーのような格好で、
風呂に入らないこともあリ、奇行で知られていました。
22才で無名な彼は、数万人の観客の前に、
恐れをなして逃げ出したのかもしれない、
そう考えたのです。
しかし、彼は、静かなところで座禅をしており、
きちんとスーツを着て素晴らしいスピーチをし、
アップル2は歴史となりました。

彼が禅と出会ったのは、1973年の頃インドに放浪し、
カリフォルニアに帰ってからのことです。

曹洞宗の北米指導をしていた、鈴木俊隆と
その秘書だった、知野弘文によります。
鈴木老師の死後、
曹洞宗北米国際布教センターを継いだ、知野老師に対しては、
生涯にわたり、師として礼をとりました。
85年にアップルを追われたときにも、心の支えとし、
86年ネクスト社を設立した時には、宗教顧問として迎え、
91年、ローレンさんとの結婚式では、
神父の役割を頼んでいます。
彼の生涯の愛読書は、「弓と禅」あり。
京都には何度も家族旅行をしています。

そばと、寿司が大好きで、日本の和菓子を好み、
赤坂青野の饅頭を半年分取り寄せたりしたといいます。
最も有名な彼のスピーチは、
スタンフォードの卒業式のものでしょう。
自分はリード大学を半年で中退していて、
大学の卒業式は初めて経験する、
という話からはじめ、3つのポイントを話しました。
1、点をつなぐ

 自分の経験の意味は事前にはわからない。
 後で振り返り、初めて分かる。
 だから自分の直感を信じ、行動しよう。

2、愛と喪失について

 30歳で自分が創業したアップルをクビになった。
 しかし、自分はこの仕事が好きで
 その仕事に情熱を失っていなかった。
 そこで再び立ち上がり、仕事を始めると、
 ピクサーとネクストをつくり
 やがて、アップルに復帰することができた。
 自分の好きな仕事を見つけるまで
 立ち止まってはいけない。
3、死について

 1年ほど前膵臓がんを宣告された。

 もし今日が人生最後の日であったら、
 今やろうとすることを、
 自分は果たしてやるだろうか・・

 NOという答えが続くなら
 考え直す必要がある。

 死は生命の最大の発明で、

 古いものが去り、新しいものに道を譲る。

 内なる直感に従いなさい。

 Stay Hungry Stay Foolish 

このフレイズを二度繰りかえし、
彼の生涯最高のスピーチを終えました。

この演説は2005年に行われました。
この時、手術は成功しているように見えましたが、
癌は再発し、ジョブスはどんどん痩せていきました。
2007年、世界を変えるiPhoneを作り出し、
2011年、iPhone3の発売を見て、10月5日亡くなりました。
彼の『Stay Hungry Stay Foolish』は、
曹洞宗の創始者、洞山良价の言葉、

【愚のごとく、魯のごとく、よく相続するものを主中の主と名ずく】

の意訳だといいます。
こちらの方が難しいのですが、
愚か者のようにただ、考えず、
しっかりやり続けるものが、やがて道を悟る。
という、意味なのです。
ジョブズは、禅を生き、
世界中の人々のポケットに
コンピューターをもたらし、
まさに、世界の人々をつないだのです。

コメント