複雑系の科学と東洋思想

まず複雑系について説明が必要だと思います。
複雑系の具体例は、生物、経済、気候などが典型的です。
それに対する単純系は機械です。

複雑系は多くの要素がお互いに絡み合うように影響しあう。
単純系の例は、大砲で砲弾を撃つことです。

ニュートンの運動方程式は、
中学で習うと思いますが(あまり昔なので忘れてしまいました)
F=Maという簡単な式で、
Fは力、Mは重さ、aは加速度を表します。

100キロの重さのものを、どれだけの力で押せば、
どのくらいのスピードで動くか、ということを表しています。

ニュートンはリンゴが木から落ちるのに、
月はなぜいつまでも落ちてこないのか
ということから、万有引力の法則を発見したといいます。

大砲の弾の重さに、どのくらいの火薬を使い
爆発力を与えれば、どのくらいの速度で砲弾は飛んでいくのか・・
そしてどこに着弾するのか・・

砲身の角度をどれだけ変えれば、目標に命中するのか。
予測出来るし、計算出来ます。

この運動方程式が見事な成果をあげたので、
科学的ということは、このような方程式で説明でき、
予測出来るはずだと、ありとあらゆる分野に広がっていきました。

それは、物理学、化学、工学など理科系の学問にとどまらず、
経済学、社会学、心理学、教育学など、人文科学という分野も、
このような実験科学と言われるやり方でないと、
科学でも学問でもないと言われるようになりました。

このような、自然を大きな時計のような複雑な機械と考え、
分解し、部分の仕組みさえわかれば、どんな複雑なものも、
そのメカニズムを解明出来るという考え方を
要素還元主義といいます。
この科学は300年に渡り世界を支配し、
現在も科学的ということは、このような考え方を指します。
観察する人は、対象に影響を与えないように
客観的に距離を取り、対象にどのような力が働いているのか
わかるためには、他の要素 (不純物)を取り除いた実験環境を整備し、
行動を観察し、測定します。
(そうでなければ計算し、予測することは出来ません)
そしてその条件を確定すれば、
誰がやっても同じ結果が出ます。
ところがそうは行かない分野がたくさんあります。
いや実際は、ニュートンのやり方がうまくいくのは
「特殊な」場合と思うべきなのです。
ところが、それだけでは解決出来ない問題が次々と出てきました。
気象の世界では、天気予報は当たりませんでした。
株価の予想も出来ませんでした。
政治や病気は、機械のような
予測が出来ないことが分かってきました。
アメリカでは、経済学生物学物理学などの
他分野のノーベル昇給の学者が
従来の学問の枠を超えて、サンタフェ研究所をつくり
複雑家の化学(COMPLEXIY)が生まれました。
現実の世界では、例えば水の分子が何兆も集まり、
ぶつかり合い、影響しあっているその時、
一つの分子の性格と、集団の性格は全く違います。
普通の温度では、ゆらゆら、ピチャピチャ、
ゴボゴボいう液体となります。

冷やして零度以下になると凍り・・個体になります。
熱っすれば、水蒸気となって飛び回ります・・

一つずつの分子の構造には何の変化もありません。
分子同士の距離、関わり方、運動、関係が変化し、
全体としての動きや性格が変わります。
水が特殊な例ではありません。
自然界の全てのものが、
小さなものが組み合わさり、影響しあい、階層をなしています。
生物なら、まず高分子があり、DNAがあり、
アミノ酸があり、タンパク質があり、細胞に至ります。
それぞれの階層の性格はまったく別次元なのです。
全てのものはそれ単独で存在しているのではなく、
他の存在との関係の中にあります。
それは少しもじっとしていません。
次々と影響しあい、その結果変化し、
その影響がどのように広がっていくか予測が出来ません・・
全てはダイナミックにとどまることなく動いています・・
これが、世界宇宙の実際の姿なのです。
ここまで読んで頂くと、
これが仏教の世界観にそっくりだ
ということに気づかれると思います。
仏教の最高の論理的な経典と言われるのが、華厳経です。
世界がバラバラな存在の寄せ集めと見ることを、
事法界という、その世界を貫く法則があると見るのを、
理法界といいます。
そして、一つ一つの(事)の中にも(理)があること。
同時に、一つ一つの(事)がなければ(理)もないこと。
それが、理と事、事と理が、
別ではなく、一つでもないことを
理事無礙法界といいます。
更に、全ての「事」が宇宙全ての「理」を内包しているなら、
全ての「事」は同様の構造を持ち、
お互いに照らしあう関係にあること。

そして響きあい、展開することを、
事事無礙法界といいます。

これが華厳の思想であり、
東洋は2000年前に複雑系を説いていると言えると思います。

来週は、儒教の最古の古典易経とDNAとアミノ酸の話をしようと思います。

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