先週は、渋沢栄一を紹介しました。
この『論語と算盤』は、
いろいろな出版社から出ていますが、
私が読んだのは、
昭和60年初版の、国書刊行会出版のものです。
今、その後の課題図書
「日々に新たなり」下山二郎 国書刊行会出版
を読んでいて、
来週はその内容を書くつもりなのですが、
今週は間に合わないので、佐藤今朝夫社長を紹介します。
国書刊行会は、都営三田線の志村坂上にあります。
初めて訪ねたのは何年前になりますか・・。
早稲田大学の教室を借りて、熊野教授に
マインドフルネスの講演をお願いしたとき、
国書の野口さんという、企画部長が出席され、
佐藤社長が会いたいと言われているというのがきっかけでした。
最初は、講談社や集英社なら知っているのですが、
国書刊行会など知らないし、
山ほどある出版社で名前も右翼みたいだし・・
場所も、田舎だし、日本語学校をやっているなんて・・
変なところだと思い、
あまり気が進まなかったのですが・・訪ねてみると、
佐藤社長がおもしろい!
いつも階段で4階まで上がり、
3時半頃から焼酎の水割りを飲みながら
色々な話をし、
5時になると、社員が一人二人上がってきて
6時になると終えて引き上げます。
社長は81歳今年の11月1日で、82歳になるはずです。
私より、11歳年長ですが、
毎日畑仕事もし、元気で過ごされています。
今出版社は不況で、紙の本が売れず、
電子書籍の方に人気が移っていますが、
国書は儲かっています。
これは、社長の出版人としての50年のキャリアと、
マーケテイング感覚によるものだと思います。
福島の出身で、若い頃は凄い貧乏をして、
知ならぬ、血をドラム缶何本も売って
生き抜いてきたといいます。
最初の出版の成功は、50年近く前、
戒名辞典の発刊によるものです。
ある寒い冬の日、知人の坊さんが訪ねてきて、
まあ、寒いから一杯やれ
と、ストーブを囲んで、燗酒を飲みだした。
「坊主丸儲けだから、まあ、苦労もなくいいな」などというと、
「そうでもない、苦労もあって、最近はろくに寝ていない」
「へー坊主にもどんな苦労があるんだ?」と聞くと
「実はある、県知事がなくなって、葬儀がある。
戒名をつけるのだが、それが難しい。
生前の功績、人柄、その他うまく組み合わせ
ふさわしいものを考えなければならないのだが、
なかなか、大変なんだ」
「へー何か師匠から教わるようなマニュアルのようなものは、ないのか」
「いや、全て、見様見真似で、なにもない」
そこで、佐藤社長はひらめきました。
戒名辞典を作れば売れる!
これが大ヒットになり、
当時は銀行振込がないので、書留で送ってきました。
封筒が天井まで積まれたといいます・・
出版社というと、
自分の趣味で本を出すという感じで、
ベストセラーなど、20冊に一冊・・
というのが、
TBSブリタニカの編集者から聞いた話でしたが・・
出版もマーケテイングなのだと、その時感じました。
実際、このビルの一階には宛名印刷機があり、
全国の書店はもとより、公立の図書館、
高校、大学の図書館、医者・歯医者、
各宗派の寺院のリストがあり、
出版物に応じて
ダイレクトメールを印刷するようになっています。
ジャンルは広く、東洋、仏教関係から、
美智子上皇の愛読書「それいけジェームス」まで
かなりマニアックな本があります・・
毎月10冊ぐらいは出版しています。
2年前に、経産省の江崎さんの
「社会は変えられる』を出版しましたが、
今私は、何冊かの企画を持ち込んでいます。
佐藤社長から私への相談が、
渋沢栄一の、『論語と算盤』の英訳版の出版なのです。
夏目漱石の『心』の英訳版を出したら
そこそこ、ヒットしています。
渋沢栄一は来年、NHKの大河ドラマで取り上げられ、
再来年には、新一万円札の顔になります・・
佐藤社長を見ていると、
創業社長というものはどんなものかわかる気がします。
経営はリスクを取って
未来に投資をしなければなりません。
未来を100%予測することはできないから、
失敗することもあります。
ある種のゲーム、賭けなのですが、
経営者はそのゲームのルールを
ある程度変えられるのです。
それを考えるのが、経営者の第一の仕事に違いない。

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