論語と算盤 part23 口は禍福の門なり

渋沢はいいます。

余は平素多弁な方で、
よくいろいろの場合に口を出し、
あるいは、演説なぞも所構わず頼まれればやるので、
知らず知らず言い過ぎることなどあって、
人から揚げ足を取られたり、笑われたりすることもある。

一切口を閉じたら、その結果はどうであろうか?

・・それでは災いの方は防げるとしても、
福の方は以下にして招くべきか
芭蕉の句に「物言えば唇寒し秋の風」というのがある。

このように、災いの方ばかり考えていると

消極的になりすぎる。

口は災いの門であるとともに、
福祉の生ずる門でもある。
片言隻語といえどもおろそかにせず、
禍福の分かれるところと考えて
大切にするべきだ。
論語に、「巧言令色少し仁」という言葉があります。
渋沢は幼少の頃から、この有名な文章を
知っていたに違いありません。
昔の武士は、あまり軽々しく口を開かぬ印象があります。

渋沢は、渋沢箱の文章にもあるように、
生来おしゃべりであったようです。
その人生を貫く信条として、
論語を選びながら、
この文章には困っていたのかもしれません。
話がうまいというのは、同時に、
話を大げさにするという意味にも取れます。
つまり、口が滑り、失敗を招くということになるのです。

だからこそ、十分に考え、落ち着いて、
なんのために、誰のために
話すのか、考えるべきだと思います。
人は言葉を使う事により、
嘘がつけるようになりました。

「目の前にないもの」を語ることができる
ということは、嘘がつけるということです。

しかし、同時に、人間は言葉を使うことにより、
猿と別れ、知恵を一人だけ、あるいは一代限りでなく、
蓄積し、積み重ね、文明文化を築きました。

よくよく、心して、言葉を大切にしましょう。

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