論語と算盤 part6 時期を待つ要あり

渋沢栄一は、半世紀ほどの活動で、
500の企業、600の非営利事業を起こしました。
明治から大正、昭和の初期という
日本経済黎明の時という背景があったにしても
50年で1000以上というのは、
毎年20以上、月に2件弱の立ち上げです。
どれほど大変かは、
自分で一つでも会社を作ったり、事業を起こしていたら
よく分かると思います。

これほどの事業をいわば起業した人物が、
「時期を待つ」というのだから
説得力があります。
栄一は、半世紀、日本を一等国にする
と戦い続けた結果、若いときのようには

争わなくなった、といいます。
なぜかと言うと、これは、
『世の中のことは、
かくすれば必ずかくなるものである』
という因果の関係をよく呑込んでしまって、

すでにある事情が因をなし、あるという
結果を生じてしまっているところに、
突然横から現れて形勢を転換しようとしました。

以下に争ってみたところが、
因果の関係は、にわかにこれを断ち得るものではありません。

ある一定の時期に達するまでは、
人力で到底形勢を動かし得ざるものであることに
思い至ったからです。・・

因果縁起というのは、釈迦の説くところで、
儒教のものとは思えません。
しかし、私は仏法のファンなので、
渋沢のこの見解は味わい深いです。
世の中には仕掛けなければならないこともありますが、
待たなければいけないこともあります。
花を育てる時、早く咲け、早く咲け、と
栄養をやったり、水をやったりしても
早く咲くわけではありません。

原因と結果の関係を見極め、
生き物の中の動きを見極め、むしろ、邪魔をしません。
風を避け、寒すぎず、暑すぎず・・

事業もまた、とにかく急いでも
早くできるものではありません。

出来たところで
運転する人間の技量が育っていないと
かえって大事故を起こします。

渋沢もまた、この文章の中で、
争ってみたいのですが、
時期を待つしか無いということがあります。
いわゆる官尊民卑というやつです。
渋沢は大蔵次官というような官の立場から、
日本を一等国にするのは民間に人材が必要だと、
反対を押し切って野に下ったような人物です。
特にこのことは
なんとかしたいと思っていたことでしょう。
時期を待たねばならないと、
渋沢が待ってから、100年以上、
これはそろそろ、良い時期なのかもしれません。

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