論語と算盤

勝海舟が
『世の中で恐ろしいものを二人見た。
 一人は西郷南洲。
 もう一人は、横井小楠』
といいました。
横井小楠は、熊本藩士で
1860年『国是三論』を書いています。
【富国】【強兵】【士道】の3つです。

士道について、 
西洋の学は、ただ事業上の学にて、
心徳上の学にあらず、(中略)
詰まるところ戦争になる
事実の学にて心徳の学なくしては、
西洋列強戦争の止むべき日なし。
この文章は、何回か前のメルマガの冒頭の文章ですが、
これは、現代の世界の有様、
実際の戦争は一部でも、争い諍いの種の尽きない
現代の世界を予言しているように思います。
この文と、渋沢栄一の『論語と算盤』は、
同じことを言っています。

ただし裏表であり、横井は西洋の学問はただ、
実業の学問で物質万能。
それだけだと、突き詰めれば物質的に
強いものが勝つということで、
戦争しかなくなります。
したがって日本人はそれに加えて
『心』の学問を学び続けねばならないといい、

渋沢栄一は論語と算盤ということを言い出したのは、
明治6年大蔵次官に当たる職を辞し、
野に降り、第一国立銀行をつくるころ、
一緒に働いていたエリート官僚が、
引き止めに自宅まで訪ねてきました。
『君は、金儲けのために国家の仕事を捨てるのか』

と謂う、詰問に、

『そのように、金儲けを卑しいことと考える風潮では、
 日本は一等国にはなれない。

 なぜ金儲けが卑しいことなのか。
 すべての仕事に貴賤はない。

 その仕事に対する姿勢だけが問題なのだ。

 例えばと、「論語」を例に取り、
 私は一生、論語の精神で実業をやってみせる』
と宣言しました。
宣言した以上、より一層論語を学び実践しなければと、
それ以来、生涯論語の専門家を呼び、
若者とともに、熱心に学び続けたといいます。
論語と算盤という本は、
彼の講演や折々の言葉を、
「処世と信条」「立志と学問」など
10項目に分類し、集大成したものです。
その最初が「処世と信条」で、その一番初めが
「論語と算盤は甚だ遠くして甚だ近きもの」
としてこの言葉の由来が書かれています。
70才実業界引退の時、
東京ガス役員福島氏寄贈の書画が送られました。

その絵には、論語の本と算盤と、
一方にシルクハットと朱鞘の大小が書かれていました。
それを見た三島毅先生(中州、二松学舎創立者)という漢学者が、

「これは面白い。君のような算盤の実践者が
 それほど論語を読むなら、
 私の方も負けずに算盤を勉強しなければ」

と言われた、といいます。

「空理に走り虚栄につく国民は、
 決して真理の発達をなすものではない

 その富をなす根源は、仁義道徳、
 正しい道理の富でなければ
 完全に永続することはできぬ」

と論語と算盤の両輪を回すことを説きました。
教養は本棚にしまって置くものではなく、
その内容を日々の実践に生かさねばなりません。

次回から論語と算盤の両輪を回すことを解説します。

コメント