かつての日本企業の強さは、
年功序列、終身雇用がうまく機能していました。
一旦大企業に採用されれば、
若者は先輩を見習い、少しずつ仕事を覚え
やがて熟練し、その会社の中核をにない、
やがて、後進を指導し、道を譲る、という体制になっていました。
これは、例えば伊勢神宮の式年遷宮が
20年ごとに行われます。
1000年続く、技術の伝承と同じ構造なのです。
20年ごとに行われる神宮の立て直しは、
40年前の経験者が60才です。
2回経験しているので、後進を指導し、
20年前の経験者が40才。
この時は働き盛りで、主役を努め
初めて経験する20才は、二組の先達の教えを受けながら働きます。
宮大工が一人前になるには、
まず道具を研ぐだけで3年かかるといいます。
認知科学の分野で、習い事が身につくのに、
初心者として認められるのに、500時間。
アマチュアとして人前に出られるのに1500時間。
プロとして食べていけるのに、5000時間といいます。
500時間とは、毎日10時間打ち込めば
50日わずか、一月半ですが、
週一回1時間のレッスンだと、
500週間、つまり10年かかります。
1500時間なら30年。
5000時間なら100年。
しかし、もし毎日10時間打ち込めば、500日。
つまりわずか1年半です。
知識なら、1日で学べることも、
技術として身につけるには時間がかかります。
プロというのはそういう人で、
日本では職人と呼ばれます。
この人達は、
『この枝はこのように切ってほしいといっている』とか
独特の表現をして、
またその分野に関しては尋常ではない記憶力をもちます。
プロ棋士は100手の将棋を間違いなく並べ直し、
プロのピアニストは、1時間の曲を暗譜しています。
このような、人間の内側にできる認知構造を
認知科学ではSCHEMAと呼びます。
これは芸術家や、プロスポーツ選手だけでなく
料理人、家具職人、大工、左官、・・
様々な職業人にも当然あることで、
日本の企業は明治以來、欧米諸国の科学技術を取り入れたましたが、
この職人の技術を企業の中で受け継いできました。
この職人は容易に入れ替えることができません。
同じ技術を身に着けた職人を育てるのには
それだけの時間がかかるのです。
しかし、機械の部品は取替がききます。
部品は、取替がきくので、
取替えの時期まですり減るまで、使い切るのが合理的なのです。
仕事の大部分を機械に記憶させ、
人間はその機械に従う部品のような存在になれば、
人間のほうがいくらでも、取りかえがきくことになります。
欧米型の仕事は契約で仕事内容が明文化され、
その職務をこなせる人間を契約で雇います。
取替が効く前提なのです。
日本企業は、新人を採用し、
長い時間をかけて熟練の職人に仕上げました。
そして、塾錬の職人は企業の成長とともに、
自分の可能性を高め自己実現を行ってきました。
それが日本企業の強さでもありました。
それはこの20年、正社員が減り、
仕事が熟練を必要としなくなり
失われつつあります。
コロナのおかげて働き方が変わった、DX時代。
日本的経営は形を変えるはずです。
次週は新時代の日本型企業をもう一度考えてみます。

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