かつて、全世界的ベストセラーになった本に、
アルビン・トフラーの「第三の波」という本がありました。
世界の文明は、第一の波が農業文明で、
それ以前の狩猟採集の文明を時代遅れにし
全世界に広まるのに、およそ3000年かかりました。
その次の第二の波は、工業文明で、
イギリスの産業革命から始まり、
農業文明を時代遅れにし、
世界を覆うのに300年でした。
そして第三の波は、いわば情報革命で、
それが世界をおおい、工業文明を時代遅れに
するのはわずか30年だろうという本でした。
この本が出たのは、1980年。
今から40年前になりますが、
その一節にこんな事が書いてあります。
『過去数十年の歴史から学ぶことがあるとすれば、
それは全ての社会問題、政治問題は
相互に絡み合っているということである。
例えばエネルギーは経済に影響を与え、
経済は健康問題へ、健康問題は、教育、
労働、家庭生活、その他諸々の分野に影響を与える。
したがって、きちんと区分けされた問題を、
他から切り離した形で扱おうとする態度
ーそれ自体が産業時代のメンタリティの産物であるーは
混乱と惨めな結果しか生まない。
・・・この時代錯誤的な組織構造がもたらすものは、
絶えざる権限争いであり、責任逃れであり、
逆効果の発生の連続である。・・・」
これは、産業革命型の第二の波文明が、
時代の変化に合わなくなっていることです。
私は、30歳のとき、この本の影響を、
目からウロコという印象で、強く残していますが、
実は、この本に書かれていることは
半分は実現し、半分はまだ実現していません。
この時代は、日本ではバブル崩壊前であり、
世界ではインターネットが、世に出る前でしたが、
先程の文章は、2021年の新型コロナに対する、
日本政府の対応にピタリと当てはまります。
2005年には「ハイコンセプト」という本が出ました。
著者のダニエルピンクは、
産業革命のときに、機械が工員に変わったように
現在はコンピューターが、パターン化し達的労働、
ルーチンや知識で仕事をするシステムエンジニアや、
医師や、MBAを取得した管理者を時代遅れにする
と言いました。
監訳した、大前研一は、アルビン・トフラーと親しく、
この本は第4の波ではないかと伝えたといいます。
それでは、これからはどんな時代になるのでしょう。
あるべき社会にモデルはないのでしょうか?
トフラーの言う話は、
仏教を学んだ人にとっては『普通』の話です。
『この世には、他から独立して存在するものは何もなく、
汎ゆるものは相互に依存し支え合っている』
というのは、仏教では諸法無我という、根本原理です。
現代科学では、複雑系の科学という分野だと思います。
機械は部品の総和がピタリと
全体と一致する線形の仕組みですが、
生命は部分の総和以上の全体を作り出す、
非線形複雑系のシステムです。
機械文明は、工場が生産と価値の中心で、
人間は工場に従属します。
その影響は教育、インフラ、交通、事務所、
市場、経済、政治のすべての分野に及んでいます。
実はこのシステムに最もよく適合したのが
第二次大戦後の日本社会でした。
もともと、滅私奉公の精神と、民族の均質性、
識字率の高さを持っていた日本民族は、
戦争に勝つために、すべてを犠牲にすることから
一夜にして、
経済戦争に勝つことに、すべてを犠牲にしました。
均質化は徹底し、時間に遅れない (工場は定時で始まる)
先生の言うとおりやる(仕事は工場の管理者が知っている)
皆と同じようにやる(一人が頑張るとベルトコンベア流れが乱れる)
この三原則に、
みごとに適合したのが日本だったので、
日本はアメリカを追い抜き
世界一の経済大国に一時的にはなったのです。
今後は違うモデルになります。
それは、機械ではなく生命をモデルにします。
生命はもとは一つですが、
細胞分裂を繰り返し、やがて、多細胞生物になり
植物、動物が支え合い、自然生態系を作ります。
そして、複雑なネットワークの中で
多細胞が相互のコミュニケーションの速度を上げて
神経系を作り上げました。
今でもすべての動物は卵の段階から、
内胚葉、中胚葉、外胚葉を発達させ
進化の流れを胎児期に体験し、生まれてきます。
内胚葉は、消化器系となり
中胚葉は、骨格筋肉血管系となり
外胚葉は、皮膚と神経系になります。
私は、消化器系が農業文明、
骨格筋肉血管が工業文明、
そして皮膚と神経系が情報文明という気がします。
つまり、地球文明は完成しつつあるのです。
これからは、古い文明が新しい文明により
時代遅れになるのではなく、
すべての文明が支え合い渾然一体になることを目指します。
日本はその最先端にまた、立ちうる国です。
日本はそのあるべき姿さえ見えれば
一夜にして変われる国なのです。

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