認知心理学と生成文法

1978年の夏だったと思います。

京王プラザホテルで、日本ブリタニカが、NEW ENGLISH MASTER

という英語教材を発表しました。

上智大学で、3年以上の歳月をかけ、完成させた、日本で唯一最初の
(おそらく今日まで他にない)認知学習理論を使った英語教育教材です。

38年前、この発表の場にいて、開発者として説明してくれた
上智大学の、フェリス・ロボ教授に、

28歳だった私は、

会場で質問しました・・

「先生、2つ質問が有ります・・

ひとつ、私達が説明するお客さんは上智大学に入学するような、
英語が得意な人ではありません・・
ごく普通の、英語の苦手な日本人です・・
その人が、このプログラムで勉強したとき、
先生から視て、まあ、英語ができる
となるには、
どのくらいの期間このプログラムで勉強したらよいでしょうか?

2つ目は、お客様に説明するときに、

どのような人が
このプログラムを開発したのか

説明することが大切です。
ロボ先生が、どのような研究をなさってきたのか、教えていただけますか?」

「第一の質問に対して・・・勉強したらですよ、・・
まず、毎日一年間で
かなりの成果をあげるでしょう。」

「第二の質問ですが・・武田さん、このプログラムは、私が開発したとは
 言わないでください」

私はこの時、ドキッとしました、ヒョツトすると、このプログラムは
日本ブリタニカの開発したもので、上智大学は、監修しただけとか・・?

「このプログラムを開発するには全体をドラマにする必要がありました。

 私にはドラマを作る才能がありません・・
 そこで、ドラマを作るには
 英文学者のドナルド・メイスン先生の力を借りました。

 また、日本語にない、英語の発音、イントネーション、リズムについては
 音韻学者の、ロバート・ウイナー先生の

 文法については、吉田研作先生やチャールス・ハンコック先生の
 協力が必用でした・・

 このプログラムの制作にあたり、
 長年の上智大学の日本人に対する教育の成果と夫々の専門の
 18人の教授たちの努力が必用でした・・

 とても、私一人ではこのようなプログラムは完成できなかったでしょう。」
私はこのロボ教授の話に感動し・・
その後10年、その意味を
考え、また教え、訴え続けました。
このプログラムの最大の特徴は、言語の学習をゲームの学習に例えている
ところだと思います。

あらゆる、ゲームは千変万化します。
全く同じゲームは二度とありません。

従って、ゲームを丸暗記しても無意味です。

そして、千変万化するゲームを楽しんで対応することができるのは
ゲームには一定のルールが有り、そのルールは我々を縛るためのものではなく
そのルールがあるから、相手の打つての意味がわかり
ソレに対応することができるのです。

ゲームができるようになるには、夫々の基礎練習を反復することは
必用ですが、充分ではありません。

夫々の基礎を、ゲームの実際の場面でどのように「使うか」という

応用、運用の練習が欠かせないのです・・

コレは実際の事実に即しています。

進化の結果、この文法構造が全ての人間の子供にもって生まれるので

親が、体系的に文法を教えることもなく
完ぺきな文章を話すわけでもないのに

三歳前後、学校で文法や読み書きを学ぶ以前に、
すべての人間は、その母国語を取得でできる・・

この文法の取得は人間独自のものだ・・

というのが、チョムスキーの「文法と構造」という論文の趣旨です。

この発想は、革命的で

外からの刺激による繰り返しの学習
という考えに対し

内側に既にあるものが、枠組みとなり、

外部からの刺激により、微調整するという、

全く、逆の発想とお思いました。

そこに、人間の自発性とか主体性、自由と選択などを
感じたのです。

次回はその2つの考えをどのように融合させるか
先日聞いた話と渡しの考えを述べてみます。

コメント